大学入学者選抜制度 先進的な取り組み事例

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受験一辺倒の英語教育の変革をめざし英語外部資格試験を活用する入試改革を実施

立命館大学では、2016年度入試から、法学部・理工学部を除く全学部で、センター試験の「外国語」において、英語外部試験の指定されたスコアを提出すれば、「英語」の得点を満点に換算して、入学者選抜に利用することとします。どのような課題意識の下に入試改革を進めているのでしょうか。入学センターの宮下明大次長にお話を聞きました。

教科書をどれだけ習得したかだけではなくどのような英語力を身につけたのかも大切にします。

立命館大学は、SGU(スーパーグローバル大学)において、「グローバル・アジア・コミュニティに貢献する多文化協働人材の育成」をテーマに掲げています。世界の中心軸がアジアにシフトしつつある現在、アジアを中心に持続可能な世界をつくる担い手を育てるのが目標です。

【写真】宮下明大 次長

宮下明大 次長

世界で活躍する際、その共通言語となるのは、いうまでもなく英語です。

グローバル人材の育成が叫ばれる現在、当然、英語の入試問題のあり方も検討しなければなりません。教科書で学んだ内容をどれだけ習得しているかだけではなく、学生がどのような英語力を身につけているのかを、きちんと測る必要が出てきたと捉えています。

海外への留学の際には当然高い英語運用力が必要ですし、理系学部の場合、学士課程においても海外の学会で研究発表する場合があり、それはもちろん英語で行います。文系の学生も卒業後、グローバル企業に進むことを考えると、早い段階から英語を高いレベルで習得しておく必要があります。

ところが、大学入学者選抜と大学教育との関係について見ると、全国的に英語の入試改革は進んでいるとはいえない状況です。

本学の一般入試で英語の問題は、13学部すべて共通問題としています。作問は大学全体で行っており、大学としてのメッセージは込められていますが、学部・学科のアドミッション・ポリシーやカリキュラム・ポリシーをうまく反映した出題にはなっていません。また、センター試験利用の入試では、高校の学習指導要領に沿った教科書の内容をどれだけ習得したかで英語力を測らざるを得ません。

入学試験において、英語の力を測ることは重要ですが、本学では、英語の教科学力試験を受けて入学する学生は、全体の6割にすぎません。推薦入試やAO入試では英語の教科学力試験は実施せず、調査書などの書類選考で英語力を判定しています。その際の材料に資格試験のスコアを提出する受験生が少しずつ増えてきています。

英語力が高くても伝える中身がなければグローバル人材とはいえません。

早いうちからコミュニケーションとして使える英語力を身につけておく必要がありますが、他教科の基礎学力を付けたり、日本文化を知ったりすることも大切です。

単に教科の英語力が高ければそれでいい、というわけではありません。本学では入学段階で必要な力は次の二つだと考えています。一つは、学習指導要領に沿った教科・科目の基礎学力。もう一つは、クラブ活動やボランティアなどの課外活動で身につけた協働性や社会性などです。新しいことにチャレンジするには、幅広く社会に対する興味・関心がなければいけませんし、英語を一生懸命学習していても、相手に伝える中身がなければグローバル人材とはいえないからです。

立命館大学では、毎年たくさんの日本人留学生を世界に送りだしていますが、海外で生活して初めて、自分がいかに日本文化について知らなかったかに気づく学生は少なくありません。伝える手段としての英語を勉強するだけではなく、伝える中身を豊かにするためには、高校時代に正課以外の時間で様々な経験を積み、幅広い教養や問題意識を育むことが、大学入学後の学びを広げるベースになると考えています。

本学の入試では募集の6割が教科学力を問う入試、残り4割が推薦・AO入試などの多面的選考です。その中にはスポーツや芸術、海外経験など様々な評価軸があります。グローバル社会の担い手として活躍する可能性を秘めているのは、こうした多様な経験や素養をもつ学生たちかもしれません。これらの入試がメインストリームになるとは思いませんが、今後はこれまで以上に大きな比重を占めるようになると考えています。

その意味で、現在、文部科学省で進められている高校教育・大学教育・大学入学者選抜の三位一体の改革は的を射ていると思います。大学と高校がお互いに批判し合っている時代もありました。大学としては、優秀な学生が入学するのをただ待っているだけではいけませんし、教科学力を重視する進学校であっても、受験一辺倒の学習スタイルが変化しつつあることを理解しなければいけません。2015年度に始まったSGH(スーパーグローバルハイスクール)の取り組みも、英語がよくできる高校生を育てることが目的ではないはずです。答えのない世界に挑戦していける高校生を育てることを、大学と高校が一緒に考えていかなければいけない時代になっていると思います。

英語の4技能別に自分の強みと弱みをきちんと把握することが大切です。

高校時代から「聞く」「話す」「読む」「書く」の4技能を意識して英語力を高めてほしいと考え、入試において英語外部試験を活用することにしました。

本学では、2016年度入試から、法学部と理工学部を除く全学部で、実用英語技能検定、TOEFL iBT、IELTS、GTEC CBTの四つの英語外部試験について、一定のスコアがある受験生はセンター試験の英語の得点に置き換えられる制度を設けることにしました。「英語は世界とコミュニケートするうえでも必要であり、そのためには4技能別に自分の力を把握してほしい」という本学のメッセージです。

GTEC CBTを選んだ理由の一つは、入試の代わりとして用いる上で、本人確認を含めた厳密性が高いこと。そして、もう一つは、高校現場における今後の広がりの可能性が高いことです。GTEC for STUDENTSを受けている高校生が、GTEC CBTを1、2回、高校2年生の終わり頃から高校3年生までに受験すれば、受験者の母数は増えていくだろうと考えています。

英語を使ってグローバルに活躍しようと考えた時、英語の4技能のうち、どれが自分の強み、弱みなのかをきちんと把握しておく必要があると思います。国際関係学部の入試(IR方式)では、英語外部試験のスコアや級を英語の教科学力試験の得点に換算する指標もつくりました。

もっとも、入学試験の英語がよくできる学生が海外に行きたいかというと、必ずしもそうではありません。そういう学生にもっと海外に目を向けさせ、入学後の国際プログラムにエントリーしてもらうことが課題です。一方で、英語力はあまりないものの、活動的で世界にチャレンジしたいという学生もたくさんいます。そうした学生たちには、英語外部試験の客観的な指標を使って4技能別に課題を明らかにし、足りないところを伸ばすようにサポートしていきたいと考えています。

高校時代から将来の海外留学を意識した英語の学習に取り組んでほしいと思います。

少しでも留学を考えているならば、高校時代から4技能別に英語力を測ることで、自分の英語力における強みと弱みを把握し、英語力を高めておくことが大切です。

SGUの取り組みでは、留学生に関する目標として、2023年までに、海外からの留学生の受け入れ4500人、日本からの派遣は3200人を目標として掲げています。また、TOEFL iBTやGTEC CBTなどの英語外部試験を利用する受験生の割合を、2016年までは17.6%ですが、2023年までに70%にするのが目標です。

本学の留学プログラムは大学全体で行うものと、各学部が独自に行っているものの2種類がありますが、経費の面や要求される英語スコアの点から海外派遣学生の定員はプログラムによっては充足していません。英語力向上のために言語習得センター(CLA)も設けていますが、自己負担がかかるため、受講に二の足を踏む学生もいます。

1年間の留学コースは、ガイダンスの開始が1年以上前になるので、2回生で留学を考え始め、3回生で留学しようと思っても、急にスコアは上がりません。早い段階で自分の英語力を知り、4技能別に目標をきちんと定めることが大切になってきます。意欲はあるのにスコアが足りないので留学できませんということにならないように、高校時代からそういう意識をもって学習することが大切です。

入学後に海外留学を考える際、まず自分の実力を知るために英語外部試験の受験が必要です。そうした意識を浸透させることも、検定試験の級・スコアを入試で評価するねらいの一つです。それによって、これまでの受験一辺倒の英語教育が変わり、検定試験を受ける高校生は、数年で急激に増えると期待しています。

大学入試に活用できるようになったことで、高校の先生方は、生徒に英語外部試験の受験を勧めやすくなるはずです。生徒にとっても、大学進学後の留学や社会でも役立つという明確な目的意識をもって英語を学べるようになるのではないでしょうか。

高校生のみなさんに伝えたいのは、世の中に出たら答えは一つではないということ。そして、答えのない問いに挑戦するのが大学での学びだということです。正しい答えを探す勉強だけではこれからの時代は不十分です。答えのない問いについて考えたり話し合ったりする学びや、海外の同世代の高校生と語り合う経験をもっていただきたいと思います。

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