大学入学者選抜制度 先進的な取り組み事例

【写真】早稲田大学

英語4技能テスト利用入試がもたらした効用と課題

早稲田大学文化構想学部文学部では、2017年度入試から「一般入試(英語4技能テスト利用型)」が導入されました。これにより、10年以上前に始まった英語カリキュラムの改編の一環として、初めて入試にも4技能を測る仕組みが実現したことになります。この入試制度を推進してきた文学学術院の安藤文人教授と、実際に「一般入試(英語4技能テスト利用型)」を利用して入学した学生2名に、その思いを語っていただきました。

(左から)

文学部1年 松本 夏美さん

早稲田大学 文学学術院(文化構想学部) 安藤 文人教授

文化構想学部1年 前本 陸希さん

早稲田大学の英語4技能化への取り組み

文化構想学部・文学部では、前身である第一文学部・第二文学部において2004年から英語カリキュラムの全面的な改編を進めてきました。これは、それまで技能別科目だった英語授業を4技能統合型に変更し、訳読中心の英語教育からの脱却を目指すものです。現在の学部に改編された2007年には、英語入試問題についても指示文をすべて英語にするなど大幅に刷新しました。さらに、2017年入試から両学部では、TEAP、IELTS、実用英語技能検定(英検)、TOEFL iBTのいずれかのテストで取得したスコアを利用して受験することのできる新しい入試制度を採用しました。このような改革の背景にあるのは、高大接続の推進と2032年までに外国語授業の割合を50%に増やす、という早稲田大学における数値目標(VISION150)です。いま、英語4技能のバランスが取れた高い英語力を持つ学生を集めることで、早稲田大学における今後の英語教育改革に加速がかかっています。

2017年度入試
文化構想学部 志願者数 一般入試合格者数 一般入試合格倍率
一般入試志願者 10,205 886 11.1
英語4技能テスト利用型志願者 543 293 1.8
一般入試と英語4技能テスト利用型の併願者 423※ 83※ 4.95
文学部 志願者数 一般入試合格者数 一般入試合格倍率
一般入試志願者 8,270 850 9.73
英語4技能テスト利用型志願者 368 182 1.9
一般入試と英語4技能テスト利用型の併願者 293※ 64※ 4.46

※ 一般入試志願者に含まれる。

利用可能な英語4技能テストの基準スコア(2018年度入試)
技能 TEAP IELTS 実用英語技能検定※ TOEFL iBT
2016年2月〜
2016年3月受験者
2016年4月以降
受験者(CSE2.0)
総点 280 6 1級/準1級合格者 2200 60
Reading 65 5 500 14
Listening 65 5 500 14
Writing 65 5 500 14
Speaking 65 5 500 14

※ 実用英語技能検定:2016年4月以降の受験者は、4技能試験が適用される級に限ります。

英語4技能テスト利用入試に対して受験生が感じたこと

─ 「一般入試(英語4技能テスト利用型)」を受験した動機は?

前本 外部検定試験を利用して受験できる大学が増えていたことや、早稲田大学内の他の入試制度とも併願が可能なため、チャンスが広がるのではないかと考えたことが大きな理由です。数ある試験の中でTEAPを選んだのは、TEAPのスコアを持っていると、早稲田大学以外にも受験できる大学が多かったからです。私自身、高校時代から英語は比較的得意でしたし、英検受験の勉強もしていましたので、受験にあたり特に不安は感じませんでした。

松本 私は、周りの同級生が外部検定試験を受けているのを聞いたのがきっかけです。早稲田大学の場合、「一般入試(英語4技能テスト利用型)」は一般入試の他の方式と併願できることを知り、念のためにTEAPも受けてみました。

─ 実際にTEAPを受けてみた感想は?

松本 私は特にスピーキングが苦手だったので、TEAPの対策本を用意して、スピーキングでよく使うフレーズを試験前に練習しました。リーディング対策については一般入試の英語と変わりません。大学受験用の単語集や、通常の対策をしていれば、十分にカバーできるのではないかと思います。

前本 私も特別な対策はしていません。高校では英検を全員受験していたので、そのための勉強をしていたくらいです。

松本 友達の中には、ライティングやリーディングでいいスコアが出ても、苦手とするスピーキングで高得点が取れなくて大学の指定する基準に満たず、受験資格が得られないという人もいました。4技能でバランスのよいスコアを取れるように、日頃から学習していなければなりませんね。

英語をさらに磨くために大学の授業があるべき姿

─ 「一般入試(英語4技能テスト利用型)」で入学したことによるメリットを感じていますか。

前本 必修の英語科目に関しては、授業中に使われる言葉も含めてすべて英語ですが、先生のおっしゃっていることは大体理解できます。3科目型の一般入試で入学してきた友達の中には「わからないところがある」という人もいますが、私は比較的聞き取れている方だと思います。

安藤 「一般入試(英語4技能テスト利用型)」で入学した学生からは、必修の英語科目の授業内容が簡単すぎるという声も聞きます。彼らの高い英語力が授業で実際に活かされていないようですので、これからは教員の側も、そうした学生の率直な意見を聞いて授業に反映していきたいですね。

松本 授業にもよりますが、ペアワークをする際にも隣の学生のスピーキングが苦手だとつい日本語が出たりすることもあります。実際に、授業が簡単すぎると感じることもあります。

安藤 私たちも「一般入試(英語4技能テスト利用型)」で入学した学生と、そうでない学生が一緒に授業を受けると英語力に差があるだろうなということは感じます。「一般入試(英語4技能テスト利用型)」で入学した学生には、選択の英語科目で、さらに上のレベルの授業を履修するなどして、英語力を上げてほしいと思っています。

松本 授業は、リーディングでもリスニングでも教科書に沿って進められるので、予習をしてくれば、3科目型の一般入試で入学した学生であっても十分に対応できるのではないでしょうか。文化構想学部の友達に聞いた話では、ネイティブ講師が指導するクラスでは、あるテーマについて英語でディスカッションする授業をしているそうです。

安藤 必修の英語科目では、なるべく英語だけで話す授業を目指していますが、担当する先生によってばらつきがあるのかもしれません。「一般入試(英語4技能テスト利用型)」で入学してきた学生たちの英語力に即した授業の体制ができていないのであれば、それは、これから私たちが取り組むべき課題ですね。

─ 英語力をさらに磨いていくために何か目標はありますか?

前本 大学在学中に留学したいと思っているので、リスニングはもちろん特にスピーキング力を、ある程度海外の大学でも通用するくらいのレベルに上げたいと思っています。

松本 私は高校1年生のときにカナダに短期留学をしたのですが、そこで実際に英語を使う楽しさを覚えました。そういう経験もあるので留学には興味はあります。ただお金もかかりますし、単位の振り替えなどいろいろな問題がありますから、実現は簡単ではないと思います。でも、海外に行ってみたいという気持ちは強いですね。

安藤 文化構想学部・文学部では、選択英語として「Intensive Studies」という科目群を用意しています。そこは英語の授業ではなく、英語で他の一般的な科目を学ぶという形ですから、レポートも英語で書かなければなりません。留学時に役立つだけでなく留学の準備にもなります。「一般入試(英語4技能テスト利用型)」で入学した学生なら、そのような授業を履修する条件はほぼクリアしていると思いますので、今後はそういう科目を積極的に履修することも検討してみてください。

大学とそこで学ぶ学生がそれぞれ目指すもの

─ 将来の夢や目標を教えてください。

前本 広告関連の会社に進みたいなと思っています。これからはどんな分野でも英語を使う機会は増えてくると思いますから、これまで通り英語力は磨いていくつもりです。

松本 就職活動の際、自分の英語力を示す高いスコアを持っていることがアドバンテージになると思いますので、今後も英語検定試験のスコアはさらに高めていきたいですね。今のところ就職先まで考えてはいませんが、何かしら英語という武器を使って活躍したいです。私は漫画やアニメが好きで、カナダで現地のアシスタントスチューデントに、持って行った漫画をあげたところ喜んでもらえました。そうした、日本の文化を伝える役割も担えるといいなと思います。

─ 「一般入試(英語4技能テスト利用型)」の導入により、何が変わりましたか?

安藤 「一般入試(英語4技能テスト利用型)」の制度を導入したことで、学生のレベルアップにつながっていると感じています。従来からの3科目入試を併願するケースも多く、両方で合格した学生もたくさんいます。英語の授業でも、この制度がなかった昨年と比べて、今年の学生たちは英語でよくディスカッションができますし、英語力が全然違うと感じています。そうしたレベルの高い学生たちには今後、グループワークなどの際にリーダーになってもらい、英語のクラスをより活性化させたいものです。私たち教員も、これからは予想以上にレベルが底上げされた学生たちのニーズに対応していかなければなりません。「一般入試(英語4技能テスト利用型)」で合格した学生たちをいかに伸ばしていけるのかが、これからの本学の教育において問われてくるでしょう。

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