スーパーグローバル大学/ハイスクール導入事例

【写真】富山県立高岡高等学校

課題研究と活動中心の授業により、探究力、表現力の向上を図っている

1898(明治31)年創立の本校、富山県立高岡高等学校(以下、高岡高校)は、「質実剛健」「自主自律」を教育目標としています。2011年に理数科に代え、人文社会科学科、理数科学科(探究科学科)を設置。2014年にはスーパーグローバルハイスクール(SGH)の指定を受け、大学や国連機関等と連携して、富山の地域研究と世界への発信に力を入れています。

探究心や創造性を育む県の施策と、英語教育改革の流れを融合してSGHに

富山県が推し進める生徒の主体的な探究心や創造性を育む施策により、探究科学科を設置。また、2013年には英語教育改革の取り組みによりSGHに採択された。

【写真】串田至人 教頭

串田至人 教頭

2011年、県の施策によって高岡校と富山高校、富山中部高校の3校では、理数科に代え、人文社会科学科、理数科学科各1クラス(合わせて探究科学科)が設置されました。社会のグローバル化、情報化の中にあって、主体的な探究心や創造性を身につけた生徒、チャレンジ精神や知的好奇心、思考力・表現力、高い志や人間性を身につけたリーダーを育てることをねらいとしています。

2012年には、文部科学省の「外部専門機関と連携した英語指導力向上事業」(県内の事業名は「とやまの高校グローバル人材育成促進事業」)を受けて、授業改善や教材開発など英語教育の改革にも取り組んできました。探究活動の推進と英語指導の改善という二つの流れをうまく融合し、2013年、SGHに名乗りをあげ、採択されました。高岡高校のSGHは「幅広い教養と課題解決力をそなえ、ふるさとに誇りと愛着を持ったグローバル・リーダーの育成」を目標としています。取り組みの中心は探究科学科における課題研究です。メインテーマは「きときと! グローバル富山」。“きときと”とは「新鮮で活きが良い」という意味の富山弁。ふるさとの富山について、大学や博物館、国連機関など外部機関の力を借りながら、文理を問わない幅広いテーマで探究活動を行い、成果を世界に発信するものです。

本校の言う探究力とは、探究活動を行うために必要な課題設定力、仮説形成力、課題解決力、プレゼンテーション力、コミュニケーション能力の総称です。2単位の教科「情報」の時間を活用し、少人数によるゼミ形式で、情報収集、分析、整理、プレゼンテーションを実施しています。

活動主体の授業で実践的な英語力を養成

2012年に、文部科学省の「外部専門機関と連携した英語指導力向上事業」の指定を受け、CAN-DOリスト活用、英語ディベート大会参加、スカイプ活用した交流事業、異文化理解ワークショップなど英語の授業改革を始めた。

授業では教科書の内容理解にとどまらず、4技能を総合的に伸ばすことを目標としました。特にWritingとSpeakingの活動の割合を増やし、単に教科書から答えを見つけ出すのではなく、自分の意見を英語で述べられる活動を増やしました。定期テストも教科書の文章をそのまま出すのではなく、同じようなテーマの初見の文章を読んでサマリーを作らせたり、自分の意見や感想を書かせたりするなど、CAN-DOリストに基づいて、どこまでスキルが身についたのか、知識・技能をどのように使えるかを測るものになりました。

英語ディベート大会にも参加し、グローバルな社会問題について英語で討論するなど実践的な英語力の向上を図っています。そのため英語表現Ⅰの授業でミニ・ディベートや1分間スピーチを行い、定期考査では3人1グループで4分間のディスカッションを行わせるなど、授業での活動と学期末のSpeakingテストがしっかりとリンクするようになっています。

さらに探究科学科では、インターネットのスカイプを使って海外の大学院生や企業人とグローバルな問題やビジネスについて英語でディスカッションする「インターネット交流体験」、富山大の外国人教員や留学生、JICAの職員など外国語を母語とする人々を招いて、富山を紹介したり、国際関係論の講座を開催したりする「異文化理解ワークショップ」を行うなど、学校にいながらにして海外の人々と交流する機会を数多く設けています。

海外における異文化体験が生徒の主体性を引き出す

選抜された生徒がアメリカの高校や大学などを訪問し、課題研究の成果を英語で発表した。自分の英語が通用しないという体験は生徒の成長を促し、コミュニケーション能力や表現力、主体性を飛躍的に向上させる。

探究科学科で2年生3月に実施している海外研修は、探究活動の一環として2014年度から始まった取り組みです。アメリカの高校や大学などを訪問し、高校生や大学生、社会人の前で課題研究の成果を英語で発表します。参加者は両学科から40人を、志望理由書や英語の自由英作文、英語の成績や英語力検定試験として唯一採用されているGTEC for STUDENTS(以下、GTEC)のスコアなどを総合して選抜します。

生徒たちにとってハードルが高いのは、英語による発表よりも、その後の質疑応答です。「シンプルな言葉で相手にわかるように説明するには、発言内容に対する深い理解がなければなりません。語学力以前の問題として、話す内容がないとコミュニケーションがとれないということを生徒たちは痛感したと思います。うまくコミュニケーションがとれなかった、自分の英語が通用しなかったといった失敗体験から、もっと勉強しなければいけないという思いを抱いて帰国した生徒も少なくなかったと思います。

実際、研修に参加した生徒の成長は著しいものがあります。同行した串田教頭も「わずか8日間でこれほど生徒が変化した研修は初めて」と絶賛するほどでした。「グローバル・リーダーに必要な条件は何かというテーマで、英語によるディスカッションを行った際、生徒たちが一斉に手を上げたのに驚かされました。国際的な場では、自分から話さない限り発言の機会はないということを、研修前から繰り返し伝えてきたので、生徒たちも自覚をもって参加してくれたのだと思います。」

日常の授業で質問すらしたことのない生徒が、数日後には積極的に英語で発言していたのも先生方を驚かせました。その生徒は帰国後も積極的に先生とコミュニケーションをとるようになっています。

生徒の探究力成長を測定するルーブリック(到達指標)を独自に策定

探究活動における議論や発表を通して自身の成長を実感する生徒、「専門的な学問に興味を持っている生徒が多く、中学ではできなかったハイレベルな会話ができる」など、生徒同士で刺激をし合い切磋琢磨する雰囲気も生まれている。

課題研究を通して、生徒の世界観が広がっていることが何よりの成果でした。課題の設定から仮説の形成、検証を通して課題の解決までの一連の流れをやり切ったことに、生徒たちは自信を深めています。生徒の意欲や挑戦マインドも高く、難関大の志望者も増え、最後まで目標を落とさず志望を貫き通す芯の強さも出てきました。

英語力については、1年生におけるGTECのスコアの伸びが毎年大きくなっており、指導が積み上がっていることも多くの教師が実感しています。一方課題は、探究活動の評価方法を確立することです。現在、ルーブリック(到達指標)の運用が始まっていますが、まだ改良の余地は多いと思います。生徒が自分自身の成長を実感したり、課題を発見したりするためには、自分は今どこにいて、次に何をすればいいのかということが一目でわかるルーブリックが必要です。そもそも探究力とは具体的にどのような力なのか、まだ校内で統一的な見解を得られていない部分もあります。どのような力を育てることが、生徒の将来を開くことにつながるのか。先生方と議論を繰り返しながら、よりよい評価指標の確立に努めていきたいと思っています。

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